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イギリスの老舗家具メーカー アーコール(ERCOL)。 アーコールを代表する作品の一つに『ゴールドスミスチェア (Goldsmith Chair)』という・・・
イギリスの老舗家具メーカー アーコール(ERCOL)。 アーコールを代表する作品の一つに『ゴールドスミスチェア (Goldsmith Chair)』という”ウィンザーチェア”があります。 ここでは、ウィンザーチェアとアーコールの歴史、そして『ゴールドスミスチェア』についてご紹介します。
ウィンザーチェア(Windsor Chair)は、イギリスで誕生した椅子です。 17世紀にイギリス南東部にあるウィンザー地方で、ろくろ職人や農民などのために作られてきた実用家具「カントリーチェア」が起源とされています。
19世紀初頭から、ウィンザーチェアの需要は急速に伸び、生産地はイギリス各地に広がりました。 その中でも、ロンドンから西北西に約50キロ、バッキンガムシャー地方にあるハイ・ウィカム(High Wycombe)は、群を抜いていました。 ハイ・ウィカムは、チルターン丘陵(Chiltern Hills)という森林資源が豊富な丘陵地帯に近かったこと、テムズ川の支流であるワイ川(River Wye)が流れているため水量に恵まれていたこと、そして首都ロンドンに近いことから流通の面でも好都合であったため、ハイ・ウィカムは、イングランド最大の家具産地となったのです。
↑ 上の画像は、1880年、後に国王”エドワード7世”となるプリンス・オブ・ウェールズの訪問のために、ハイ・ウィカムのメインストリートに作られた椅子のアーチです。 その数400脚! ハイ・ウィカムのウィンザーチェアの生産量は、最盛期には一日に約4700脚の椅子が生産されていたそうです。
ウィンザーチェアは、家庭用の椅子だけでなく集会場や教会など公共用の椅子としても多く使用され、生産量、品種を誇っていましたが、1880年代前後を最盛期として、次第に衰退していきます。 衰退した原因は、第一次世界大戦よる物資の不足と男子労働力の不足、さらに、世界各地で実用的、日用品的な木製椅子が生産され、イギリスの市場にも輸入されるようになったことなどが挙げられます。 そのような影響を受け、ウィンザーチェアの生産に携わる若年労働者が減り、高齢化のため閉鎖される工房も増えていったのです。
衰退していたハイ・ウィカムのウィンザーチェアですが、再び動きだします。
1910年、イタリア生まれのルシアン・アーコラーニ(Lucian Randolph Ercolani:1888–1976)は、家具製造会社を経営していたフレデリック・パーカー(Frederick parker)にデザイナーとして呼ばれ、ハイ・ウィカムにやってきました。 ルシアン・アーコラーニは、フレデリック・パーカーでさまざまな家具のデザイナーを手掛けた後、独立し、1920年にアーコール家具製造会社(Ercol Furniture Ltd.)を設立しました。 ルシアン・アーコラーニは、比較的安価なエルム材を使い、生産性向上のために、木を水蒸気で蒸し弓のように曲げる「曲げ木」の技術を採用し、ウィンザーチェアを機械化により大量生産する体制を確立していったのです。
アーコール社の成功は、「ハイ・ウィカムの恐るべき男」、自動車の生産体制を確立させたヘンリーフォードになぞられ「ウィンザーチェアのフォード」とまで呼ばれました。
アーコール社は、その後ハイウイッカムから15キロの場所にあるプリンス・リズバラ(Princes Risborough)に移転します。 プリンス・リズバラにあるアーコールの工場は、環境に配慮した建物として評価されています。
持ち運びやすいといった機能性、シンプルで美しいアーコールのスタイルは多くの人を魅了しています。 イギリスのファッションデザイナー、マーガレット・ハウエル(Margaret Howell)が、昔使っていたチェアを懐かしく思い、スタッキングチェアとバタフライチェアの復刻を実現したことで、アーコールの人気はさらに高まりました。 アーコールは、英国ヴィンテージ家具の代表格として、今なお根強いファンを増やし続けています。
ゴールドスミスチェア(Goldsmith Chair)とは、アイルランド出身の小説家・劇作家のオリバー・ゴールドスミス(Oliver Goldsmith:1730年-1774年)が所有していた椅子をモデルとしたデザインを『ゴールドスミスチェア』と呼びます。
オリバー・ゴールドスミスは、田舎牧師が数々の災難に合いつつも屈することなく大らかに生きてゆく話「ウェイクフィールドの牧師」をはじめ、「負けるが勝ち」などの作品を世に出した作家です。
オリバー・ゴールドスミスが、どのようにしてその椅子を入手したかは不明ですが、オリバー・ゴールドスミスが亡くなった1774年に、友人で王立人道協会の創設者であるウィリアム・ホーズ(William Hawes)に遺贈されます。 その90年後、ウィリアム・ホーズの子孫であるサー・ベンジャミン・ホーズ(Sir Benjamin Hawes)の妻が、ヴィクトリア&アルバート美術館へ寄贈しました。 現在でも、オリバー・ゴールドスミスのオリジナルチェアは、ヴィクトリア&アルバート美術館に展示されています。
ゴールドスミスチェアの特徴は大きく3つあります。
それまでのウィンザーチェアの座面は半円型が主流でしたが、ゴールドスミスチェアは、ほぼ円形に近い形をしています。 また、お尻の形に合わせて削り出されています。
座面に背もたれのスティックを差し込む穴の角度です。 ゴールドスミスチェアが誕生する前は、座面に差し込む穴は笠木やアームに向けてほぼ垂直に穴があけられていました。 ゴールドスミスチェアは、後ろに約3度、傾斜しています。 過去の椅子にはなかったスタイルです。 角度をつけて差し込む技術は、高難度で熟練の技が必要です。 ゴールドスミスチェアの制作工程のなかで、職人が見つけ出したのではないか、と言われています。
ゴールドスミスチェアは、前脚と後脚が同じサイズで作られています。 同じ形の部材をうまく利用することで、材料に無駄がなく作られています。
ゴールドスミスチェアは、250年以上も前に作ったとは思えない、洗練されたチェアです。 ウィンザーチェアの古くからのデザインを保ちつつ、新しく進化した要素も持ち合わせた完成度の高いゴールドスミスチェアは、アメリカン・ウィンザーチェアやアーコールをはじめとして著名家具メーカー、北欧のデザイナーにも大きな影響を与えました。
アーコールのゴールドスミスチェア。 座面は、台形型のヒップに合わせた窪みのある座面になっています。 また座り心地を良くするために、座面の大きさはオリジナルのゴールドスミスチェアより大きく作られています。
シンプルで美しいデザインはもちろん、身体にフィットする曲げ木の背もたれと座り心地の良さは、アーコールの技術力が詰まった逸品です。
現在でもアーコールのゴールドスミスチェアは製造されていますが、ヴィンテージのゴールドスミスチェアだけが持つ独特の空気感と存在感は、新品にはない趣があります。
椅子は、家具の中でも使用頻度が高いアイテムです。 毎日使うからこそ、座り心地の良さはもちろん、心を豊かにしてくれる椅子を使いたいですね。 きっと、日々の生活の中にホッと一息つける豊かな時間を提供してくれると思います♪
ケントストアは、30年以上にわたり現地イギリスでアンティーク家具を買付しているため、現地のアンティークディーラーとも幅広いネットワークで繋がっております。 それゆえ、入手困難なヴィンテージのアーコールも種類豊富に数多く輸入することが可能です。
今回ご紹介したゴールドスミスチェアの他にも、クエーカーチェア、フープバックチェア、エックスバックチェア、シスルバックチェアなどの椅子、バタフライテーブル、リフェクトリーテーブルなどのテーブル、サイドボードなど、数多くのアーコールのヴィンテージ家具を取り扱っております。
英国より仕入れした家具は、家具産地の静岡にあるケントファクトリーで経験豊富な職人が自信を持って修理します。 家具業界からも認められているケントの修理技術。 必ず満足していただけると確信しております。 ぜひ、ケントストアのヴィンテージ アーコールをご覧いただければ幸いです♡
アーコール(ERCOL)の作品は非常に多くありますが、ルシアン・アーコラーニが、1950年代後半にデザインした、アーコールを代表するテーブル『ドロップリーフテーブル(バタフライテーブル)Dropleaf Table』についての記事は、ぜひこちらをご覧ください。
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