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英国のツイードと同様に、見ているだけで暖かく幸せになるアランニット。 日本では1960年代頃からのアイビー・トラッドブームに大流行し、いまだに幅広い世代に人気が・・・
英国のツイードと同様に、見ているだけで暖かく幸せになるアランニット。 日本では1960年代頃からのアイビー・トラッドブームに大流行し、いまだに幅広い世代に人気があります。フィッシャーマンズセーターとしても有名ですが、今回はそのアランニットについてお話したいと思います。
アランニットの「アラン」はアイルランド島の西、ゴールウェイ湾に浮かぶ島々、アラン諸島です。 アラン諸島は、大中小3つの島々で、その名はゲール語から。 ゲール語とは、アイルランドで話されていた言語で、アイルランドでは公用語とされています。 ケルト民族(古代、ヨーロッパに広がった民族)の古代言語ですが、特にアイルランドやスコットランドでは現代も大切にされています。 大中小3つの島々は、イニシュモア島(Inishmore)、イニシュマーン島(Inishmaan: Inis Meáin)、イニシィア島(英: Inisheer: Inis Oírr)。 アラン(Árann)は「長い山々」の意味で、イニシュ(Inis)は「島」、モア(Mór)、マーン(Meáin)、Oírrはそれぞれ「大きな」「真ん中」「東」を表しています。 アラン諸島は石灰質の岩盤だけで成り立ち、常に強風が吹きつける荒涼とした時には自然と闘いながらも共存してきた『世界の最果て』と言われる島なのですが、約5500年前から古代人が住んでいたと言われており、いまだに解明されていない遺跡もたくさん残されているそうです。
寒さと海風が厳しく農業に適さない土地のアラン諸島の人々の生業は漁業でした。 大西洋の強風から身を守るために強風から身を守るために、島の人々が身につけていたのが独特な網目模様の「アランセーター」。 今や、伝統工芸品ともいわれるアラン諸島を代表する製品でもあるアランニットですが、もともとはスコットランドの漁村のフィッシャーマンズセーターが、アラン諸島に伝来し、現在知られているアランニットは1910年頃誕生したと言われています。 そこで、アランニットをご説明する前にフィッシャーマンズセーターについて。
イギリスやフランス、北欧の漁師が漁に出る際に着ていたとされる手編みのニットです。 海の上での寒さに対応するため、保温性と防寒性に優れ、また油分が抜かれていない未脱脂のウールを使用しているため防水性も高く、ずっしりとした重みがあることも特徴です。 もともと、フィッシャーマンズセーターの原点となったのは、「ガーンジーセーター」だそうです。 ガーンジーセーターが誕生したガーンジー島は、イギリスとフランスの間に浮かぶ「チャネル諸島」にあります。 このチャネル諸島は、セーターやスウェットシャツの歴史を語るうえで欠かせない地域ですが、この「ガーンジーセーター」は古くから伝統的に編まれてきたもので、襟ぐりの三角マチや袖ぐりのマチなどで可動域を多くしていること、前後を着間違えてもいいように平面的に編まれていることが特徴です。
漁師の奥さんがそれぞれの思いを込めて編んだことから、家庭ごとに編み柄が異なると言われるアラン模様ですが、今や世界的に愛されている柄の意味をご紹介します。
最もよく目にする編み目です。漁師たちが使う船を引く際のロープ(縄)は、命綱の意味もあり、漁の安全と大漁の願いが込められています。
ひし形状の編んだデザインで、漁師のカゴの中身がいっぱいになることを表し成功や大漁を願う意味が込められています。
砦や荒波を防ぐ石垣などが表現されています。
漁に欠かせない網を表現しているという説や、ハチの巣に似ていることから働きバチのような勤勉さへの礼賛を表しています。
内枝が幹から芽を出す様子を表わしていて、長寿と子孫繁栄への願いが込められています。
「男性は魚を捕り、女性は編み物」が島の日常であった昔からの伝統を今でもつないでいるアラン島の人々。 お守りともされてきた編み目模様や羊の毛糸のちょっぴりチクチクする感じも、すべて皮膚感覚で伝わってくるケルトの魅力は、天然の賜物なのですね。